鉄は、必須ミネラルの1つで赤血球の主成分のヘモグロビンの材料となっています。


大人の人間の体内には約4.2gの鉄が存在し、そのうちの65%はヘモグロビンと結合し、肺から取り込まれた酸素を全身の細胞に運んでいます。この働きをしている鉄を「機能鉄」と呼びます。


残りの約30%は「貯蔵鉄」として、肝臓、骨髄、脾臓で貯蔵され、出血などで機能鉄が不足すると血液中に放出されて利用されます。


さらに残りの数%は筋肉の成分と結合し、酸素を運搬・貯蔵したり、代謝反応に関わったりしています。


栄養素としての鉄は、ヘム鉄と非ヘム鉄の種類に分けられます。ヘム鉄は動物性食品に多く含まれ、非ヘム鉄は植物性食品に多く含まれています。


鉄の体内での吸収率は約8%と非常に低く、とても欠乏しやすいミネラルなのですが、非ヘム鉄に比べてヘム鉄の方が約5倍近くも吸収されます。非ヘム鉄は吸収率が低いですが、ビタミンC・クエン酸・ラクトフェリンと一緒に摂取すると吸収率が上がります。

また、非ヘム鉄を摂取する時に、動物の肉や魚肉を一緒に食べると、非ヘム鉄の吸収が促進されます。


一方で、穀物に含まれるフィチン酸、お茶に含まれるタンニン、卵黄に含まれるホスビチン、ほうれん草などに含まれるシュウ酸は、体内で鉄の吸収を妨げてしまうので、食べ合わせには注意が必要です。


鉄不足は世界的に多くみられ、成長期の子供・妊娠中の女性は鉄の必要量が増えるので摂取量が少ないと不足してしまいます。その他、月経・月経過多・子宮筋腫・痔・胃、十二指腸潰瘍・胃がんなどで出血があると不足しやすくなります。


鉄が不足すると、酸素が全身に行き届かなくなり、貧血・顔面蒼白・頭痛・めまい・倦怠感・動悸・息切れ・食欲不振・疲れやすくなる・集中力低下・イライラ・体温調節機能の障害・免疫と感染抵抗力の低下・運動機能の低下・認知機能の低下といった体のさまざまな機能に支障が出ます。

鉄不足で代表的な貧血ですが、貧血といっても原因によって種類はさまざまで、「鉄欠乏性貧血」は、血中の機能鉄が不足し、不足した時に補う貯蔵鉄までもが底をついて血中の鉄が不足している状態であるといえます。


鉄を多く含む食材は、レバー(特に豚)・赤身の肉・アサリ・牛ヒレステーキ・真イワシ(丸干し)・カツオなどの赤身の魚肉・しじみ・小松菜・菜の花・生揚げ・レンズ豆・大豆・インゲン豆・納豆・乳製品・卵などに多く含まれています。


鉄は普通に食事をしていれば、過剰症を起こすことはありません。


サプリメントなどで長期間、過剰摂取していると肝臓に障害を起こしたりしてしまうので、

食事からコツコツ摂取するようにしましょう。

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